不動産を売ったときにかかる譲渡所得税とは
不動産を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)」という税金が課されるのをご存知でしょうか?マイホームや土地などの売却は、多くの人にとって一生に一度の大きな取引です。にもかかわらず、税金のことをよく知らずに損をしてしまうケースも少なくありません。
この記事では、初心者の方でもわかりやすいように、不動産の譲渡所得税の仕組みや計算方法、節税対策などを丁寧に解説します。
譲渡所得税とは何か?
譲渡所得税とは、不動産などの資産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される税金です。給与所得や事業所得とは別の扱いになり、所得税・住民税の対象になります。
売却益が出なかった場合や、損失が出た場合は基本的に課税されません。
不動産売却に関わる3つの税金
不動産の売却では、次の3つの税金が関係してきます。
– 譲渡所得税(所得税)
– 住民税
– 復興特別所得税(所得税に上乗せされる税)
これらをまとめて「譲渡所得課税」と呼び、利益に対して合算して課税されます。
譲渡所得税の計算方法
不動産の譲渡所得税は、利益に対してかかる税金です。つまり、売却価格そのものではなく、あくまで「儲け」に対して課税されます。
譲渡所得の計算式
譲渡所得は次のように計算します。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
– 取得費:購入金額、購入時の仲介手数料、登記費用など
– 譲渡費用:売却時にかかった仲介手数料、測量費、解体費用など
売却によって得られる金額から、取得時にかかった費用と売却にかかった費用を差し引いた「純粋な利益」が課税対象です。
課税譲渡所得 × 税率 = 譲渡所得税額
実際にかかる税額は、以下のように算出されます。
課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税・復興特別所得税)
この「税率」が所有期間によって変わるため、次に解説します。
所有期間によって変わる税率
譲渡所得税の税率は、「所有期間が5年を超えているかどうか」で大きく異なります。
短期譲渡所得(5年以下)
不動産を所有していた期間が5年以下の場合、「短期譲渡所得」となり、以下の税率が適用されます。
– 所得税:30%
– 住民税:9%
– 復興特別所得税:0.63%
– 合計:39.63%
長期譲渡所得(5年超)
所有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」となり、次のように税率が軽減されます。
– 所得税:15%
– 住民税:5%
– 復興特別所得税:0.315%
– 合計:20.315%
所有期間のカウント方法
この5年のカウントは、「売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうか」で判定されます。例えば、2019年5月に取得した不動産は、2025年1月1日時点で5年を超えていれば、長期譲渡扱いになります。
譲渡所得税の節税方法
高額になりがちな譲渡所得税ですが、各種の特例や控除を活用することで節税が可能です。以下に代表的なものを紹介します。
3,000万円の特別控除(マイホーム特例)
マイホームを売却した場合、「譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例」があります。これにより、たとえ売却益が出たとしても、課税対象を大きく減らすことが可能です。
【主な適用条件】
– 自分が住んでいた家を売却
– 家屋や土地を売却した年の前年・前々年に同様の控除を受けていない
– 親族間などの特別な取引でないこと
所有期間10年超の軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、さらに税率が軽減される特例があります。
– 6,000万円以下の部分:税率14.21%
– 6,000万円超の部分:税率20.315%
この特例と、3,000万円控除は併用可能です。
買い換え・交換の特例
マイホームを売却して、新たに買い換える場合、一定条件を満たせば譲渡所得の課税を将来に繰り延べることができます。これにより、当面の税負担を回避できます。
申告と納税の手続き
不動産を売却して利益が出た場合は、確定申告をして譲渡所得税を納める必要があります。手続きには期限があるため注意が必要です。
確定申告の時期と方法
譲渡所得が発生した年の翌年2月16日〜3月15日の間に、税務署で確定申告を行います。電子申告(e-Tax)にも対応しています。
提出書類の例:
– 確定申告書B
– 譲渡所得の内訳書
– 売買契約書(コピー)
– 登記簿謄本
– 仲介手数料などの領収書
損失が出た場合の対応
売却で損失が出た場合でも、確定申告を行うことで他の所得と損益通算が可能なケースがあります。特に住宅ローンが残っているマイホームの売却では、損失を最大3年間繰り越せる特例もあります。
よくある勘違いや注意点
不動産売却における譲渡所得税には、初心者が見落としがちな落とし穴もあります。以下のような点には特に注意しましょう。
リフォーム費用は取得費にならない?
取得費に含められるのは、基本的には購入時にかかった費用のみです。売却前に行ったリフォーム費用は、「譲渡費用」として計上できる可能性がありますが、すべてが認められるわけではありません。
家族間での売買も課税対象
たとえ家族間での取引でも、税務署は市場価格と比べて適正価格であるかをチェックします。著しく安く売った場合は、贈与とみなされることがあるため注意しましょう。
登記されていない名義変更は無効
所有者の名義が正式に登記されていないと、所有期間の起算や特例の適用に不利になる場合があります。売買後の名義変更は必ず登記を通じて行いましょう。
まとめ
不動産を売却する際には、利益に対して譲渡所得税がかかることを知っておくことが非常に重要です。所有期間や控除の適用によって、税額は大きく変動します。3,000万円特別控除や軽減税率の特例などを活用すれば、節税効果も期待できます。
税額が高くなりがちな不動産売却だからこそ、事前にしっかりと計算し、確定申告の準備をしておくことが大切です。不安な場合は税理士に相談することで、ミスなく申告・節税できるでしょう。
この記事を参考に、譲渡所得税の仕組みをしっかり理解して、安心して不動産売却を進めてください。